サクリファイス
自転車ロードレースは他のスポーツとはいろいろ違うことが最近分かり始めた。基本的に個人のレースなのに、チームの戦略が勝敗を左右する。出場している選手の中には、最初から勝利を目指さないものがいる(そっちのほうが多い)。だから選手のほとんどは1度も記録に名を残すことなくキャリアを終える。個人の名前が記録に残る試合なのに、多くの選手はただ1人を勝たせるために試合中に「働いて」、その1人が勝てばそれが自分の勝利でもある。
主人公の性格付け、『ただ、あの人を勝たせるために走る。それが、僕のすべてだ。』は、今は僕にもわかる。僕が「勝つ」ことだけが僕の人生を決める要素のすべてじゃない。僕の働きを受けた誰かが勝つ、それも立派な僕の勝利なんだ。もっとも、誰かの「勝利」のために僕のすべてをサクリファイスするほどのめりこめるものに、僕はまだ出会ってはいないけれども。